宇宙空間での広告物の禁止
米政府、宇宙空間での広告掲示を禁止・企業の動きに先手(NIKKEI NET)
米連邦航空局(FAA)は19日、地球上空の軌道に商業広告を載せた物体を旋回させるなど、宇宙空間に広告を「掲示」することを禁止する規制案を発表した。企業などが将来、宇宙の広告利用に乗り出すことを予想して先手を打った。
というニュースを見つけて「へえ」という感じです。低い軌道に物体をのせると月くらいの大きさに見えるので、そこにロゴなんかをのせると低コストで何億人もの人に見てもらえる、という話らしい。・・・なんですが、元ネタにあたってみたら日経のこの記事は少々ミスリーディングな感じでした。
FAAの発表した規制案はここからダウンロードできるのですが(参照:PDF)、それをよくよく読んでみると、Commercial Space Launch Actの2000年の改正で既に、宇宙における過度な広告(obtrusive space advertising)に対する規制は存在していて(49 U.S.C. chapter 701参照)、ただそれをFAA(が授権しているAssociate Administrator for Commercial Space Transportation)が実施するにあたって必要な規則を今回整備した、というだけのようです。そう理解した上で日経の記事に戻ってみるとそうもとれそうなくだり(「現行法ではFAAが「宇宙広告」を取り締まる権限はない。」)もあるにはあるのですが、まああの書き方だとよくわからないですね。
ちなみに規制の対象のobtrusive space advertisingとは「宇宙空間における広告であって、望遠鏡等の技術的な装置を用いる事なしに地球の表面から人間が認識しうるもの」(advertising in outer space that is capable of being recognized by a human being on the surface of the Earth without the aid of a telescope or other technological device.)(49 U.S.C. 70102)と定義されています。例えば屋外の広告物に対する規制の条例の場合のように形状とか色彩がどうこうという以前に宇宙に広告を掲載する事自体がobtrusiveであると判断されているんですね。
「宇宙から広告」と言われるとなんだか突拍子もない感じがしますが、アメリカでは2000年にすでに規制が導入されていたくらいで、以前からそっちの方面(どの方面かよくわかりませんが)では問題になっていたようです。現にいくつか問題となりそうな事例もあったようで。色々と見てみると、一番議論されているのは天文学への影響なのですが、我々一般人からしてもそんなものがポコポコ打ち上げられると景観の上でもさすがに困るような。夜空を見上げると・・・広告、ってそんな世の中にはあまり住みたくない。アドバルーン程度にとどめておいてほしいですね。
ちなみにobtrusive space advertisingについては、
・A. Heck, Advertising from Space: A Real Danger?
・Obtrusive Space Advertising and Astronomical Research, United Nations General Assembly Paper A/AC.105/777
などに詳しかったので、興味のある方はどうぞ。