むかしむかし、小さな村がありました。
それは小さな村でしたが、とても豊かな村で、
村人たちは、おおむね幸せに暮らしていました。
この村からすこし遠いところに、とても困っている村がありました。
村の村長さんはその村のことを聞き、その村に、贈り物をすることにしました。
村長さんは根っからの善人というほどでもなかったかもしれませんが、
基本的にはいい人だったようです。
贈り物を送ることについても、
ちょっぴり打算が入っていたかもしれません。
でも困っている村を助けてあげたい、という素直な気持ちもありました。
しかし問題があったのです。
困っている村までの道中はとても危険。
そこで、村長さんは村の強い男たちに持っていってもらうことにしました。
村長さんはいいました。「彼らなら大丈夫に違いない。」
村人たちの中には、たいへん反対する人たちも多くいました。
「見ず知らずの人たちのために、危険をおかして行くことなんてないさ。」
でも、村長さんの決心は固まっていました。
村人たちも、意見は割れたままでしたが、仕方なく見送ることにしました。
村長さんがそう言うのだし。
ところで、この村には、とても勇敢でやさしい少年が3人いました。
少年たちは思いました。「村長さんからの贈り物じゃだめなんだ。」
「ぼくたちも贈り物をとどけよう。」
少年たちは道中が大変危険なのはわかっていましたが、
贈り物をとどけに行くことにしました。
それは村長さんの贈り物に比べると小さな箱に入っていましたが、
少年たちはそれを届けることが大事なんだと思い、持って行くことにしたのです。
これを聞いて村長さんはとめました。
「やめなさい。危ないですよ。」
「あなたたちのような小さな子供が行けるようなところじゃない」
村長は説得しました。
でも少年は聞き入れませんでした。
少年たちはとても勇敢だったのです。
村のつよい男たちが出発してしばらくしたころ、
少年たちも出発しました。
野を越え山を越え、村のつよい男たちも、少年たちも、
きびしい旅を続けました。
1週間がすぎると、
村のつよい男たちはもう少しで目的の村にたどりつけるところまで来ました。
「よかった。これで間に合うだろう。」
あまり時間がかかってしまうと、
贈り物がダメになってしまうところだったのです。
「向こうの村人たちもきっとよろこんでくれるに違いない。」
明日にも着きそうなので、男たちはキャンプファイヤーを囲んで、乾杯をしました。
ちょうどそのときです。
男たちのところに、少年たちが遭難してしまったとの知らせが入りました。
おそらく食糧も尽き、あと3日もすれば、命も危ないでしょう。
「大変だ、助けに行かなきゃ」
男たちは思いました。
今すぐ助けにいけば、ぎりぎりのところで、
少年たちを助けることができるかもしれない。
大事な大事な、少年たちの命です。
でも、少年たちを助けてから再び目的地に向かうのでは、
せっかくの贈り物がダメになってしまいます。
向こうの村の人たちも大変困っているのです。
・さて、男たちはどうすればいいのでしょうか?
・村長さんの決めたことは正しかったでしょうか?
村長さんはほんとうにいい人だったのでしょうか?
・少年たちがしたことは、「いいこと」だったのでしょうか?