鳥獣戯画に著作権?・・・今2ちゃんねるが面白いことになっている。行ってみると「著作権侵害中」とある。ことの成り行きについては、ITmediaのこの記事が分かりやすい。
問題となったのは京都新聞の「Winnyの衝撃(5) 匿名ネットと著作権 京都の文化財、デジタル化で標的に」という記事。記事には次のような一節がある。
それは、京都の文化財が優れたコンテンツとして人気がある表れでもある。高山寺(右京区)の鳥獣戯画や、建仁寺(東山区)の風神雷神図など著名な絵画は、陶器の図柄などに無断転用される例が後を絶たない。高山寺の田村裕行執事は「インターネットの広がりで、より多くの場面での転用が目につくようになった」と困惑する。そこで、あまりにもおかしいので2ちゃんねるがただいま、猛烈な勢いで著作権侵害中ですといかにも2ちゃんねるらしい文章を掲載、「著作権は、この節に別段の定めがある場合を除き、 著作者の死後五十年を経過するまでの間、存続する」とする著作権法51条1項を引いて「京都の人、寿命長すぎ!」なんてことになったというわけです。 さて。いずれにせよ今回の問題についてはどうみても2ちゃんねる側に部があるように思えるのですが、それにしても京都新聞の記事、ちょっと混乱しすぎのような気がします((意図的にそういう流れにしてあるのかもしれませんが))。正面からのハナシについてはいろんなblogですでに触れられているようなので、ここでは記事そのものを取り上げてみます。 今回の件については、著作権の問題としてはポイントが二つ。まず、(a)「鳥獣戯画」そのものについての著作権。さらに、(b)記事で出てくる鳥獣戯画をデジタル化した人に著作権が認められるかどうか――あるいは著作権はみとめられないにしても何らかの権利(あるいはなんらかの対価が還元されるような仕組み)が認められるべきなのか。この両者はもちろん別個の問題ですが、この記事はその点すらあやしい。 記事を見てみましょう。 記事のタイトルからすれば、記事で扱いたいのはどうやら文化財のデジタル化のハナシらしい。まず文化財をデジタル化しているビジネスとその社長さんの話がでてくる。社長さんは、<せっかくこっちがお金をかけてデジタル化しているのに、インターネットにかかるといとも簡単にコピーされてしまう。それはこのビジネスにとって脅威だ>((そこまで書いてはいないけれど、そういう趣旨でしょう。))((社長さんの語るものが「不正」使用かどうかはさておき))ということをいう((それ自体は、まあ分からないハナシでもない。著作権のハナシではないだろうけれど))。 「■横行する無断転用」と見出しがある部分の前半まではそういうハナシ。でも最後の段落で、「それは、京都の文化財が優れたコンテンツとして人気がある表れでもある。」という妙な話題の転換をして、鳥獣戯画の「無断転用」に「困惑している」お寺の人の話が登場する。 ・・・なんでだ?急に「文化財のデジタル化データ」が利用されると困るというハナシから、「文化財そのもの」が利用されると困るというハナシになっている。いつのまにか(a)と(b)が記事の流れで変な形でいつのまにか融合、あるいは、すり替わり。 そしてその後、「■所有者側に警戒感」という部分で、あっという間に完全に所有者側のハナシに移行。「『デジタル化すると権利((何の権利だろう?著作権ではないことははっきりしているよね))を侵害される』との風潮が広まることに危機感を感じる」ということについてのデジタルアーカイブ事業の担当の人のコメントが紹介される。 ・・・とにかくへんな記事です。デジタル化会社の社長さんの話にしぼって(b)の点についての問題提起にとどめればもうちょっとましな記事だっただろうに。そういう意味では鳥獣戯画の「無断転用」に「困惑している」お寺の人のコメントを取ってきたのが全ての災いのもとだったような。 ---------- ところで今や時の人となった「京都の人」こと鳥羽僧正は87歳(1053?〜1140?)まで生きていたらしい。今回のハナシとは全然関係ないけど、時代を考えれば、結構長生きだと思う(笑)ちなみに弟子達が師僧の遺産(当然、鳥獣戯画の著作権((そんなものが当時あったら))も含まれてるんでしょうね。)について遺言を要求したところ、「処分は腕力によるべし」と遺言状を書いたらしい。へぇ。なんかかっこいいな。