今さらながら読んでみました。取りあえず(ぼくの悪い癖だけど)穿った見方から入ってみると、確かに、純愛ブームで癒し系ブームで、「今」が欲しているものを満たしてくれる本だな、という印象が一番。ああ、なるほど、これは売れますわ、って。
・・・とか冷静に書いてみたのだけれど、正直結構泣けました。涙ぼろぼろって感じでもなかったけれど、ちょっと切なくなって、でもあたたかくなる。出てくる父子はほんと幸せそうで。ああ、「愛すること」ってこういうことだよな、っていう。おすすめです。
ただ、読み方というか、人によって評価が分かれる本なのかも、というのもあって。ちょっと素敵な「おはなし」(ひらがな)だと思って絵本のページを一枚一枚めくるような感覚で読んでいくとよいと思うのだけれど、「恋愛小説」(漢字)だと思って読み進めていくと「ストーリーの都合の良さ」が気になって、感情よりもアタマのもっと理性的な部分が作動してしまうかも。
きっと読んで感動する人とそうでもない人の差はそのへんから出てきて、ボロボロ泣いちゃった派からすれば「いや、おはなしなんだからさ」「純粋な人にしか分からないんだよ」という感じになるのだと思うけれど、そこは純粋なココロの持ち主かどうかというよりも捉え方の差で、「ついていけない」と一旦感じちゃったらそれはそれでしょうがないのかも。
おはなしの最後には意外な仕掛けが用意されているのだけれど、特にその最後のエピソードに関してはなかった方がいいという人もいそう。というのも、きっと最後の部分で捉え方の違いが一番はっきり出てきてしまうような気がするので。ぼくはすんなり受け容れられたというか、むしろあのラストがあってよかったと思ったけれど。全てを分かった上での「いま、会いにゆきます」の重みが、とにかく心にしみて。