「暗闇エンターテイメント」こと、Dialog in the Dark(参照)に行って参りました。詳細は、以下に書いてみましたが、とにかく「すごかった」です。今回の開催は9/12までで、すでに完売ですが、またどこかで開催されるのでしょう。機会があったら是非行ってみてください、オススメです。
(以下、かなりネタバレなので、行く予定のある人はご注意を。)
さて、今回の会場は外苑前の梅窓院祖師堂ホール。初めて行ったのだけど、外苑前の駅から徒歩2分ほどといったところ。大通りから脇道に入ると突如竹林に囲まれたモダンな建物が出現して、少し驚き。ちょっぴり早くつきすぎてしまったので、ゆっくりとした空間の中でしばし待っていると、同じ回で暗闇の中に入る8人が呼ばれて、暗闇ツアーのスタートです。
薄暗い部屋で白杖を渡され、アテンドの方とみんなで自己紹介。黒いカーテンを2度ほどくらいほどくぐると、そこは本当にまっくらな世界。目を開けていても、閉じていても全く変わらない。「真っ暗なところがキライ」という人が良くいるけれども、あれはウソだと思った。本当に真っ暗という状況は、実はそんなにあるもんじゃない。前の人にぶつかって「ごめんなさい」を連発しつつ進んでいる間はどうなるのやらという感じだったけれども、広い空間に出て周囲をなんとか感得してみようとすると、ある種の解放感が。
いつのまにか地面には落ち葉が落ちており、サクサクという耳障りのよい音がする。アテンドの人は割とすたすた歩いていて、こともなげに「こちらの方に小川があるので、橋を渡りましょう」という話になり、おおい、無茶言わないでよね、と思いつつ、渡ると今度は森が広がっている。池があったり、干し草が積んである広場があったり、山田さんちの軒先があったり、とにかく盛りだくさんな中を、白杖を頼りにあるいていく。
いや、白杖を頼りにというは若干ウソで、アテンドの人の声や、周りの人の方がよっぽど、頼り。入ってきたときの全然知らない8人の間には妙な連帯感が生まれ、なぜかみんなナチュラルハイになっている。というより、声を出していないとやっていられないのだな。もちろん、ぶつかるしどこへ行けばよいのか分からないということもあるし、声を出すことで自分の存在を確認しているような感もあり・・・。
そしてそうこうしてやりとりしていると、ちょっと普段なら話しかけないようなコワイ今風お兄さんも、声だけだと意外といい感じの人だったりする。目から入る情報というのも、ときには邪魔なのかなと思った、というのは実は後付けの感想だけれども(中ではそんな余裕などない!(笑))、暗闇の中には発見が、たくさん。
いつのまにか感覚もつかめてきて、家の縁側のじゃがいもやお祭りの出店の水風船で遊んだり、ほしくさの上に寝ころんだり、なんだかよく分からないけれど、やたら楽しい。例のコワイ今風お兄さんにスイカのありかを教えてもらったり。
ツアーも終盤、真っ暗なお茶屋さんで飲み物をいただくと、30分くらいかと思っていた暗闇の滞在時間は1時間を越えていたらしい。ちょっと酔ったら何か変わるのかな、という好奇心からビールをいただいてみたのだけれども、それほど変わらなかったような気がする。お茶屋さんを出てしばし歩いたところで、暗闇ツアーは終了。
最後に目をならすために、薄明るいスペースにてひとこと感想会。微かな光も、目を刺してくるという不思議な感覚。ここでアテンドのひとは、実は全盲の人だったという種明かしもある。8人で高揚した気分のまま感じたことなど話していくうちに、さきほどまでの奇妙な連帯感が高揚した気分といっしょにじわじわと引いていくのが分かり、それは日常の光のなかへと出た瞬間、ついにパッと消えてなくなってしまった。通りに出るともう夜になっており、行き交う車のヘッドライトも信号も街の明かりも、全てがまぶしく、全てが妙にうるさくて、なんだか疲れた。
そのあと、いろいろと考えることはあったのだけれども、とにかく、いまだかつてしたことのない体験、としか言いようがなく。ひとの五感というものについて考えてみたりもしたし、視覚障害者のひとはすごい!と思ったし、ひとのありがたみというものも実感した。しかし、やはり体験そのものがとにかく強烈で、言語化していろいろと考えてみること自体がなかなかむずかしい。
完全にエンターテイメントにしてしまっているというあたりも、ポイントなのだろう。押しつけがましくなく、とりあえず楽しい。その先もあるにしても、とにかく楽しい。また行きたいかどうかはともかく、一生に一回くらいは絶対にした方がよい経験をしたな、という感じも。学校あたりで体験させたら良いと思うのだけれど、大掛かりなだけになかなか難しいのかも。一度に少人数しか回れませんし。
・・・というわけで、ネタバレになるから行きたい人は見るなと冒頭に書いているところの最後にこんなこと書いて意味あるのか?と思いつつも、まだ行っていないみなさんには再度お勧めしておきます。また今度どこかで開催されるでしょうから。